― 介護保険の仕組みと、ケアマネージャーの仕事 ―
え、ケアマネって無料なの?
在宅で介護保険サービスを利用する場合、ほぼ必ず関わるのが**ケアマネージャー(介護支援専門員)**です。
毎月自宅を訪問し、体調や生活状況を確認し、必要なサービスを調整する。必要があれば病院や事業所と連携し、サービス担当者会議を開き、ケアプランを作成する。
ここまで関わってくれるのに、利用者がケアマネに直接支払うお金は0円。
「え? 本当に?」と思われる方も多いかもしれません。
実は、ケアマネージャーの報酬は、利用者からではなく、介護保険から全額給付される仕組みになっています。
つまり、ケアマネの仕事は自己負担なしで受けられるサービスなのです。
ケアマネの給料は、どう決まっている?
ケアマネージャーの報酬は、
- 要介護度
- 担当している利用者数
によって決まっています。
例えば、
- 要支援1・2:月4,420円
- 要介護1・2:月 約10,860円
- 要介護3以上:月 約14,110円
※実際の金額は地域区分により多少変動します。
この金額は1人あたり・月単価です。
その月に何回訪問しても、何時間面談しても、報酬は同じ。
一見すると、「月1回訪問して1万円」と、効率の良い仕事のように見えるかもしれません。
しかし、これは目に見える仕事の一部にすぎません。
※補足:要支援1・2(介護予防支援)の方は基本的に3ヶ月に1回の訪問、要介護1〜5の方は毎月訪問となります。
実際の「手取り」はどれくらい?
もちろん、この月あたりの金額が、そのままケアマネ一人の給料になるわけではありません。
ここから、
- 事務所の家賃
- 光熱費
- 車両費・ガソリン代
- 通信費
- 印刷費
- 研修費
- システム利用料
など、さまざまな運営コストが差し引かれます。
一般的に、35件前後を担当するケアマネの月給は、25〜30万円程度が相場と考えてよいでしょう。
責任と業務量を考えると、決して高給とは言えず、合わないと感じる人が多いのも事実です。
見えない仕事の量が、実は圧倒的
ケアマネの業務は、訪問以外の“裏方作業”が非常に多い仕事です。
- ケアプラン作成
- 利用票・提供票の作成
- サービス事業者との連絡調整
- 医師・病院との連携
- サービス担当者会議の開催
- 給付管理・請求業務
- 記録・報告書作成
- 保険者への書類提出
- 認定更新・区分変更申請の支援
これらを毎月・全利用者分行います。
訪問時間より、デスクワークと調整業務の方が、はるかに多いのが実情です。
時間外・休日も、仕事は続く
ケアマネの仕事は、平日・日中だけで完結するものではありません。
利用者の体調変化、家族からの緊急連絡、サービス事業所との急な調整など、時間外や休日でも対応が必要になる場面は少なくありません。
そのため、名目上は「休日」であっても、常に連絡が入る可能性を意識しながら過ごすことになります。
いわば、仕事と私生活の境界線が曖昧になりやすい職種と言えるでしょう。
※時間外に連絡できる体制が整っている特定事業所加算を算定している場合となります。
実は「入院すると報酬ゼロ」になる
介護保険制度の中で、意外と知られていないのがこの仕組みです。
利用者が入院し、その月に介護サービスを利用しなかった場合、ケアマネの報酬は0円になります。
しかし現場では、
- 病院との情報共有
- カンファレンス参加
- 家族からの相談対応
- 退院後の生活設計
- サービス再調整
といった対応が必要になります。
仕事量は減るどころか、むしろ増えるケースも珍しくありません。
入院をきっかけに始まる施設入所調整の現実
入院が長期化し、在宅復帰が難しいと判断された場合、次に出てくるのが施設入所の検討です。
本来、病院には医療ソーシャルワーカー(相談員)が配置されており、施設調整を担う体制があります。
しかし実際の現場では、
- 「ケアマネさんのほうで施設を探してもらえますか?」
- 「ご家族から相談が来ているので、調整をお願いできますか?」
と、ケアマネに調整が丸投げされるケースも少なくありません。
施設探しは、単なる空き確認では済みません。
- 本人の身体状況・認知症の有無
- 医療依存度(胃ろう・インスリン・吸引・酸素など)
- 経済状況
- 家族の希望
- 立地・面会条件
- 施設の受け入れ基準
これらをすり合わせながら、
- 施設選定
- 情報提供
- 空床確認
- 申込み支援
- 面談調整
- 病院・施設・家族との連絡調整
を同時進行で行います。
かなりの時間と労力がかかる業務ですが、
この期間中、介護保険サービスの利用がなければ、ケアマネの報酬は0円です。
それでも、
「この人の行き場をなくしてはいけない」
その思いだけで、支援を続けているのが現実です。
ケアマネは「生活支援コーディネーター」
ケアマネージャーの仕事は、単なる調整役ではありません。
医療・介護・福祉・行政、さまざまな制度やサービスをつなぎ、**利用者一人ひとりの生活に合わせて整えていく“生活支援コーディネーター”**です。
- 生活状況
- 価値観
- 家族関係
- 経済状況
- 本人が持つ力
これらを総合的に把握したうえで、本当に必要な支援だけを組み立てていく。
また、何でも支援すればよいわけではありません。
本人ができることまで支援してしまうと、かえって生活能力や意欲を奪ってしまうこともあります。
「できることは見守り、必要なときに、必要な分だけ支援する」
この自立支援の視点こそが、ケアマネの専門性の中核です。
利用者とご家族に知ってほしいこと
介護や制度について、わからないことがあれば、どうぞ遠慮なく聞いてください。
不安なこと、迷っていることがあれば、小さなことでも構いません。ぜひ相談してください。
ただし、ケアマネは便利屋ではありません。
制度の範囲や役割の中で、できること・できないことがあります。すべての要望に応えられるわけではない、という点もご理解いただけるとありがたいです。
それでも、担当している利用者が、自宅でその人らしく暮らし続けられること。
それが、ケアマネージャーにとって何よりのやりがいです。
まとめ
ケアマネージャーの仕事は、「話を聞いて、サービスをつなぐ人」というシンプルな役割では語りきれません。
介護保険という制度の枠組みの中で、
- 利用者の生活を立て直し
- 家族の不安を受け止め
- 医療・介護・福祉をつなぎ
- その人らしい暮らしを形にしていく
そのすべてを同時進行で担う、極めて実践的で専門性の高い仕事です。
報酬の仕組みや業務の実態を知ることで、ケアマネの関わりが「干渉」でも「管理」でもなく、生活を守るための伴走支援であることが、より理解していただけると思います。
介護は、誰か一人が背負うものではありません。
利用者・家族・支援者がチームとなり、無理なく、長く続けられる形を探していくことが何より大切です。
ケアマネージャーは、そのチームの一員として、いつでも相談できる存在であり続けたいと考えています。
困ったとき、不安なとき、迷ったとき。
どうぞ遠慮なく、声をかけてください。
あなたの「今」と「これから」を、一緒に考えていきます。

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