【介護保険】要介護認定は“人生の大イベント”!その重要性と注意点を徹底解説

こんにちは。長年ケアマネージャーとして現場で働いてきた私から、今回は「要介護認定」について、できるだけわかりやすくお伝えします。

介護保険サービスを利用するための第一歩となるこの手続き。実は、**今後の生活を大きく左右する「人生の大イベント」**と言っても過言ではありません。


要介護認定って、そんなに重要?

答えは「はい」、とても重要です!

たとえば、それまで「要介護1」だった方が、更新の結果「要支援1」になったとします。すると、次のような変化が起こります。

  • 利用できるサービス内容が大きく変わる
  • 担当ケアマネージャーが変更される(居宅介護支援事業所 → 地域包括支援センター)
  • 地域包括支援センターとの新たな契約が必要になる
  • サービスの利用量が制限されることも

具体的には、

  • 週4回利用していたデイサービスが週1回になる
  • 入浴介助のサービスが利用できなくなる
  • 特別養護老人ホームに入所している方が「要支援」に認定されると退所を迫られる場合もある

このように、認定結果によって「生活の質」や「介護の組み立て方」が大きく変わってくるのです。


認定調査とは?74項目の聞き取りと動作確認

要介護認定を受けるためには、まず「認定調査」が行われます。 調査員(市町村が委託した専門職)が自宅・施設・病院に訪問し、74項目にわたって聞き取りや動作確認を行います。

主な調査項目は以下のとおりです:

  • 身体機能・起居動作
    • 手足の麻痺、関節の拘縮、寝返り・起き上がり・歩行・洗身・視力・聴力など
  • 生活機能
    • 移動、食事、排泄、歯磨き、衣類の着脱 など
  • 認知機能
    • 生年月日・年齢の理解、季節や場所の把握、徘徊の有無など
  • 精神・行動障害
    • 被害妄想、作り話、感情の不安定さ、介護拒否、収集癖など
  • 社会生活への適応
    • 服薬管理、金銭管理、意思決定、買い物、調理など
  • 特別な医療(過去14日間の医療処置)
    • 点滴、褥瘡の処置、在宅酸素、胃ろう、カテーテルなど

正しい判定のために「定義」の理解が大切

これらの調査項目には、それぞれ明確な定義があります。 主観的な判断ではなく、定義に基づく客観的な評価が必要です。

■ 歩行

ここでいう「歩行」とは、立った状態から継続して歩くことができるかの能力です。 立ち止まらず・座り込まずに5メートル程度連続して歩けるかどうかで判断されます。

  • 手すりや歩行器、介助者の手引きがあっても、連続して5メートル歩ければ「何かをつかまえれば可」となります。
  • ただし、例えば呼吸器疾患で2〜3歩歩くと呼吸が苦しくなり、立ち止まって休みながら歩く場合は、「連続歩行」には該当せず、「歩行できない」と判定されます。

■ 片足での立位

「片足での立位」とは、平らな床で左右どちらかの片足を1秒程度上げたままバランスを保てるかの能力です。

  • 何かにつかまっていても、**数センチ程度でも片足を1秒保てれば「つかまれば可」**と判定されます。
  • 何かにつかまってもバランスが取れない場合は「できない」となります。

このような基準を事前に把握しておくことで、正確に現状を伝えることができ、認定結果がより実態に即したものになります。

また、**認知症などの場合、本人を前にしては伝えづらい行動(暴言・暴力・介護拒否など)については、あらかじめ調査員に相談し、本人がいないところでの聞き取りをお願いするか、後日の電話連絡を依頼することも可能です。**伝えにくいことこそ、調査員にしっかり伝える工夫をしましょう。


判定の流れ:一次判定と二次判定

調査結果は、以下のような流れで最終的な認定が決まります。

一次判定

調査票の内容をもとに、コンピューターで「要介護認定等基準時間」が算出され、 「要介護1〜5」「要支援1・2」といった仮の判定が出ます。

💡 一次判定のシミュレーションサイトもあります。事前に試してみることで、自分や家族の状況がどの程度かを把握する参考になります。定義をしっかり確認したうえで活用しましょう。

二次判定

保険者(市町村など)の「介護認定審査会」で、主治医意見書と調査結果をもとに、専門職が最終的な判定を行います。

📝 筆者は介護認定審査会の委員を10年近く務めています。 一次判定の結果がそのまま採用されるケースが多いですが、一次判定の基準時間がギリギリの場合や、特記事項に「介護の手間が特に大きい」ことが明記されている場合は、二次判定でより重度に修正されることがあります。

特に、以下のような具体的な内容があると審査会での議論材料となります:

  • 排泄は一部介助であっても、頻度が非常に多く1時間に2〜3回介助が必要な場合
  • 夜間の失禁が頻回で、毎回の着替えやシーツ交換が必要な場合
  • 便失禁が多く、ベッド周囲の掃除などに手間がかかっている場合

このように、同じ「一部介助」でも、介護の手間には大きな差があります。審査会では特記事項に具体的な手間の内容が書かれているかどうかを重視します。ですので、日常の介護の苦労や大変さは、なるべく細かく調査員に伝えることが大切です。


認定調査で一番大事なこと

調査時間は30分〜1時間程度ですが、この短時間で、今後1年〜4年の介護サービスの内容が決まることもあるため、事前の準備が非常に重要です。

特に大切なポイントは以下の3つ:

  1. 日常の介助状況をよく知る人が必ず同席すること
  2. 調査票にない内容でも、「困っていること」「実際に手がかかっていること」はメモして伝えること
  3. 当日は元気に見えても、普段の状況を具体的に補足して伝えること

「今日はたまたま元気」「普段は手助けがないと難しい」などの情報が伝わらないと、実際より軽く判定されてしまうリスクがあります。


納得いかない場合はどうする?

認定結果に納得がいかない場合には、以下の対応が可能です:

  • 不服申立て
  • 区分変更申請(状態が大きく変化した場合)

ただし、どちらも手続きや再調査に時間と労力がかかるため、最初の調査で正しく情報を伝えることが何よりも重要です。


まとめ:要介護認定は“生活を左右する”重要なプロセス

要介護認定は、単なる行政手続きではありません。今後どのような支援が受けられるかを決める大切な分岐点です。

だからこそ、家族や支援者が協力して、本人の「本当の生活状況」をしっかり伝えることが、より良い介護サービスにつながる第一歩になります。

また、一次判定シミュレーションの活用や、各項目の定義を理解することも、認定の精度を高める大きな助けになります。


ご質問や感想があれば、お気軽にコメントください。 「介護の現場から伝えたいこと」、今後も発信していきます!

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