高齢者を狙う「グレーゾーン商法」
——大手店舗でも油断できない
詐欺とは言い切れないけれど、明らかに「情報弱者」を狙った商法。
ケアマネが現場で直面してきた実態をお伝えします。
65歳以上の
消費生活相談件数
65歳以上の割合
(2020年度以降最高)
支払い金額の割合
(相談件数を上回る)
はじめに——数字が示す深刻な現実
「詐欺」と聞くと、怪しい訪問業者や電話での振り込め詐欺を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、高齢者の消費者トラブルはもっと身近な場所でも起きています。
国民生活センターのデータによると、2024年度の消費生活センターへの相談件数のうち、契約当事者が65歳以上のものは30万4,130件にのぼり、2023年度の27万7,604件から約2万6,500件増加しました。相談全体に占める65歳以上の割合は38.6%と、2020年度以降で最高となっています。
70歳代以降になると、「訪問販売」「電話勧誘販売」など対面型の販売形態によるトラブルが増加する傾向があります。携帯電話・スマホ関連の相談は年間約2万3,400件にのぼり、契約当事者が60歳以上の割合は年々増加傾向にあります。
ケアマネジャーとして利用者のご自宅に訪問する中で、そうした場面に何度も直面してきました。詐欺とは言い切れないけれど、明らかに「情報弱者」を狙った商法——今回はその実態をお伝えします。
まず大前提:不用品買取の訪問業者は絶対に家に入れない
「不用品を高く買い取ります」と言って突然訪問してくる業者には、絶対に応対しないでください。ドアを開けない、話を聞かない、それが鉄則です。
こうした手口はわかりやすい詐欺として広く知られるようになりました。しかし問題は、もっと「信頼できそうな場所」でも同様のことが起きているという現実です。
家電量販店でDVDデッキを買いに行ったはずが…
ある利用者が、DVDデッキが壊れたので買い替えに行きました。行き先は大手ショッピングセンターに入っている家電量販店。普段から利用している、信頼できるお店のはずでした。
ところが店員に「Wi-Fiを契約した方がお得ですよ」と勧められ、気づけば携帯電話の契約窓口に案内され、スマートフォンの買い替え契約までさせられていました。最初から「有線で使っている」と伝えていたにもかかわらずです。
翌日すぐに解約を申し出たが、対応スタッフの態度はまるでクレーマーを扱うようなものだった。説明を求めるたびにあしらわれ、「自分が悪いのか」という気持ちにさせられながら、長時間立たされ続けた末に疲れ果てて帰宅。精神的にも体力的にも、ひどく疲弊してしまったとのこと。
こうした事例は珍しくありません。「必要ないと断ったのにスマートフォンを契約させられた」「不要なタブレット端末や付属品とのセット契約だった」といった強引な契約勧誘の苦情が、各地の消費生活センターに寄せられています。
携帯ショップで「便利ですよ」と言われスマホに替えたら…
ガラケーを使っていた独居の高齢女性が、携帯の不具合で携帯ショップへ。そこでスマートフォンへの買い替えを勧められ、契約してしまいました。
私が電話しても出ない日が続いたため、安否確認で訪問すると——これまでメールもネットも使ったことがなく、操作方法が全くわからない状態になっていました。1時間以上かけて使い方を教えることになりました。
さらに次の訪問時には「携帯料金が月1万円近くかかっている」とのこと。契約内容を確認すると、不要なオプションが複数入っていました。ガラケーのときは月2,000円程度で何不自由なく使えていたのに。
この方は理解力の低下があり、難聴もある。子どもはなく、頼れる親族も近くにいない。ケアマネとしての業務範囲を大きく超えた対応を、一人の利用者に何時間もかけなければならない現実があります。
国民生活センターは事業者に対して「消費者の知識・経験・利用実態を考慮した適切な説明の徹底」を求めています。しかし現実は、現場の「売る側」の論理が優先されていると感じます。
大手スーパーでウォーターサーバーを契約させられた
別の独居高齢女性が、大手スーパーで買い物中にウォーターサーバーの勧誘に遭い、契約してしまいました。
実際に届いた水は口に合わない。解約しようとすると高額の違約金が発生すると言われ、使わないのに水がどんどん届いてくる——そんな困り果てた状況で相談が来ました。
「大手スーパーで勧誘されたから大丈夫だろう」という安心感が、判断を鈍らせてしまったのです。
⚡「大手だから安心」は通用しない時代
これらはいずれも、詐欺罪には問えないかもしれません。しかし、本人が望んでいないものを、理解が追いつかないまま契約させられているという点では、実質的な被害です。
高齢者の相談件数は全体の3割強ですが、支払い金額ベースでは全体の33.9%を占めており、悪質商法や高額契約に巻き込まれやすい実態が浮かび上がります。
大手ショッピングセンター、大手家電量販店、大手スーパー——「名の知れたところだから大丈夫」という安心感が、むしろ隙を生んでしまうこともあります。
🔍 一番の問題は「フォローできる人がいない」こと
同居の家族や近くに頼れる身内がいれば、解約手続きやクーリングオフの相談もできます。しかし独居で、認知機能の低下があり、身近に頼れる人がいない高齢者は、誰に相談すればいいのか。
そしてケアマネジャーは、医療・介護の専門職であり、契約トラブルの解決が本来の業務ではありません。それでも現場では、そうした対応を求められることが少なくない。これは個人の問題ではなく、社会的なサポートの仕組みそのものが問われている問題だと感じています。
もしトラブルに遭ったら——知っておきたい対処法
高齢のご家族や知人が一人でお店に行く際は、ぜひ一言声をかけてください。
- 「その場でサインしない」「持ち帰って考える」を習慣に。どんなに「今日だけのお得」と言われても、一晩置いて冷静に判断することが大切です。
- 契約トラブルは消費生活センター「188(いやや!)」へ。局番なしの☎188に電話すると、近くの消費生活センターや相談窓口を案内してもらえます。
- クーリングオフは多くの契約で8日以内に書面で申請可能。訪問販売や電話勧誘販売は特定商取引法によってクーリングオフの権利が保護されています。
- 携帯電話は書面受け取りから8日以内なら初期契約解除制度が使える場合があります。電気通信事業法に基づく制度で、違約金なく解約できることがあります。
「断ることは失礼ではない」——そう伝え続けることも、周囲にいる私たちの大切な役割だと思います。

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